「極めて私的な超能力」チャン・ガンミョン著 吉良佳奈江訳
韓国の人気作家による初のSF作品集。
彼女の手首には傷痕があった。彼女はその傷痕を隠すでもなく、「見るなら見れば?」という態度を貫いていた。
別れる日、彼女は初めて自分には予知能力があると打ち明けた。彼女は「あなたは、私と二度と会えない」と言い、他にも僕の未来について語ってくれた。放送関係で働くことになること、2度の入院、辛いものが好きになり、記録的な寒波のブダペストにいることなど。それは10年のうちにすべて現実となった。ただ彼女が知らなかったこともある。僕もまた超能力者だということだ。(表題作)
その他、恋愛初期の甘美な興奮状態が永遠に続く薬を飲み続けることに疑問を抱いた男を描く「定時に服用してください」など10作品を収録。
(早川書房 2420円)