「ぼくは眠れない」椎名誠著
実は35年以上も不眠症状態に悩んできたという作家が、その一部始終を明かした告白の書。
34歳ごろまでは、健康な昼間と適切な夜の睡眠の日々だった。ところが、会社員と作家の二足のわらじ生活を送るようになり、夜更けに突然覚醒し、それ以降眠れない日々が続くようになったという。
会社を辞め、独立後も生活のリズムが崩れ、深夜に原稿を書き終えても、フル回転していた脳は興奮が続き眠れない。翌日、外出しなければならないときも、出かける時間を逆算して十分な睡眠が取れる時間にベッドに入るが、眠れない。
やがて、何らかの「眠れるサイン」がないまま、ただベッドに横たわっても「眠る」ところまでいかないことに気づく。酒に酔って眠りについても超深夜とか超早朝という時刻に目が覚めてしまう。酒は時間が経つと人間の体や脳に対して「覚醒」の働きをすることも分かってきた。さらに、見知らぬ女が深夜に家に押しかけてきて、不眠はさらに悪化してしまう。
眠りを取り戻そうと手を尽くした35年間の試行錯誤の日々をつづる。
(新潮社 792円)