「女を書けない文豪(オトコ)たち」イザベラ・ディオニシオ著
平安時代の日本では「源氏物語」などのように恋愛ものは豊富だったのに、近現代の恋愛偏差値はガタ落ちである。明治の知識人は欧米に普及していた「ロマンチックラブ」に魅了されたが、ピュアな恋愛と家族や国家に対する責任との二者択一を迫られ、葛藤する。森鴎外の「舞姫」のヒロインのモデルである娘は、留学を終えて帰国した鴎外を追いかけて日本に来るが、鴎外は会おうとしなかった。だが、ただの現地妻だったら、鴎外はその後も手紙を出したり、彼女の手紙や写真を保管しておいたりしなかっただろう。(第1部)
ほかに、谷崎潤一郎の「痴人の愛」など、イタリア人の著者が偏愛する、日本文学の「どうしようもない男」たちを解剖する。
(KADOKAWA 1815円)