「大江戸あにまる」山本幸久著
石樽藩の江戸屋敷で働く幸之進は、かつて藩主の次男・喜平丸のお伽(とぎ)役を務めていたことがある。
その縁で、学識を広めるために国元から江戸に出てきた福助の世話をすることに。福助はかつて喜平丸も出入りしていた本草学に興味を持つ旗本たちの集まり「物産会合」に出席して、喜々としている。
そういえば、幸之進も当時12歳の喜平丸にせがまれて両国の見せ物小屋に駱駝(らくだ)を見に行ったことがあった。聞くと、その駱駝が9年ぶりに江戸にくるという。会合を終え帰宅中の幸之進と福助は、刀傷を負い草むらに倒れていた男を助ける。(「駱駝」)
ほかにも、羊や山鮫など異国からきた動物が江戸で起こす事件や騒動に幸之進、福助に加え、藩主の妻・小桜が巻き込まれていく連作時代小説。
(集英社 748円)