「与太郎侍」井川香四郎著
箱根山の山中で育った恵太郎は、祖父の死を機に山を下りる。道中、待ち構えていた荻野山中藩が放った刺客らに囲まれる。刺客の頭目によると、恵太郎の父に藩主を殺されたので、その敵討ちだという。だが、恵太郎は父は病死したと聞いて育った。
恵太郎を尾行していた刺客の仲間お蝶は、困っている人を見かけると着物も金もすべて差し出すお人よしの恵太郎を簡単に殺してしまうことに疑問を抱く。
そうこうしている間に、当の恵太郎は、包囲を飛び越え一目散に走りだす。そこで別の刺客らに囲まれている子連れの夫婦を助け出すためだ。命を狙われた夫は、実は小田原藩を内偵する公儀隠密だった。
お人よしだが、剣はめっぽう強い「与太郎侍」の活躍を描く時代エンターテインメント。
(集英社 770円)