「しょったれ半蔵」 谷津矢車著
三河で育った正成の望みは武士として生きること。しかし、生家の服部家は伊賀の忍びで、正成も幼い頃より父・保長から忍びの鍛錬を受けてきた。
7歳のとき、父から初めての任務を与えられるが、それはよりによって幼馴染みの渡辺守綱の暗殺だった。命に背いて、出奔した正成は、守綱に果たし合いを申し込む。切られて死のうと思ったのだ。事情を察した守綱に誘われ、以来、彼の家臣として生きてきた。
しかし、21歳のとき、守綱とともに参じた上ノ郷城攻めで、正成の眼前で保長が殺される。後日、主君の元康に呼び出された正成は、服部家の嫡男に復帰して、服部半蔵として生きていくように命じられる。
武士にも忍びにもなれない「しょったれ(半端者)」の半蔵を主人公に描く戦国エンタメ。
(小学館 858円)