「お菓子の船」上野歩著
「お菓子の船」上野歩著
製菓専門学校を卒業した樋口和子(わこ)は幼い頃、祖父の徳造が作ったどら焼きを食べたとき、春の風景と海が見えた。そして製菓学校2年のとき、浅草の奥山堂の喫茶室でどら焼きを食べたら、こんこんと湧き出る清水が見えたのだ。もう一度あの風景が見たくて、自分でどら焼きを作ろうと和子は奥山堂に就職した。
ある日、和子は徳造の幼なじみだった陽平から、徳造が菓子職人になれたのは「マムロ羊羹」のおかげだと言っていたことを聞く。さらに、徳造の軍隊時代の仲間の話で、徳造が食料を配給する給糧艦「間宮」で「間宮羊羹」を作っていたことを知る。
男ばかりの職場で祖父のどら焼きを再現しようと奮闘する菓子職人の物語。
(講談社 1925円)