「牧野富太郎の植物愛」大場秀章著
「牧野富太郎の植物愛」大場秀章著
いま、再び注目を集める希代の植物学者の評伝。
牧野の誕生日は幕末の文久2(1862)年、旧暦4月24日とされる。しかし、へその緒袋の表書きや戸籍簿には別の日付が記されているという。著者は、日付からして特定しえない出生こそが、毀誉褒貶(きよほうへん)の入り交じる混沌とした生涯のはじまりを象徴していると記す。
土佐の小村・佐川の裕福な商家に生まれた牧野だが、幼いときに両親と祖父を亡くし、血のつながらない祖母に育てられた。後に「草木は私の命でありました」とつづるほど少年時代から植物の魅力にとりつかれた牧野は、英語の辞書に載っていた植物の図解に興味を抱き、まずは佐川の植物を世界の人たちに知ってもらおうと決意したという。
以後、「毀誉褒貶が入り交じる」94年の人生を秘蔵写真とともにたどる。
(朝日新聞出版 891円)