「ロッパ食談完全版」古川緑波著
「ロッパ食談完全版」古川緑波著
戦前・戦後に活躍した喜劇王で、美食家だった著者の食い倒れエッセー。
「僕は上品ぶるわけじゃあなくって、量の少ない料理を、色々食いたいんです」と、東京の西洋料理の1皿の量が、戦前に比べて倍くらいになったと嘆く。戦前の銀座・風月堂のフランス料理を懐かしく思い出し、「お雛様が食べるみたいに」ほんの少しを、メニューを眺めながら次はこれ、その次はと、注文するときの楽しさはまことに天国だったと。そして、いまお眼鏡にかなうのは「十八屋」やドイツ料理の「ケテル」だと、それぞれの店の料理についてつづる。
そのほか、主人の声色(声帯模写)が楽しめるおでん屋や、撮影所で食べる出前のうどん、さらにスイーツや地方の名店まで。戦後日本のおいしいものを食べ尽くす。
(河出書房新社 880円)