「瞽女さと温泉」国見修二著
「瞽女さと温泉」国見修二著
小林ハルさんは越後瞽女と呼ばれる盲目の門付け芸人だ。阿賀野市の出湯温泉で13年間、あんまをしたり、温泉宿で瞽女歌を歌って生活してきた。
明治43年3月、10歳でほかの2人と三条から連れてこられて、途中で弥彦温泉に泊まった。宿でお菓子や二の膳付きのごちそうが出されたが、瞽女の親方が、食べさせてくれない。「親方、何かおかずを食べれば悪いだろうかね」と聞くと、親方は「常におまえに教えている通りだ」と言うのでご飯と汁だけにした。
ハルさんはそんな苦しみをじっと心の中に収めてきた。だが、五里の道を歩いてきて温泉につかって、少しでも心が癒やされたのではないか。
瞽女と関わりのある温泉を訪ねるエッセー。
(玲風書房 2000円)