「地名の原景」木村紀子著
「地名の原景」木村紀子著
古事記や風土記などの古い文献には、大昔の神々や王が巡幸や流離の道すがら「落として歩いた」行為や声が地名となり残っているという物語がしばしば見受けられる。文字がなかった時代、その「声」が消えないように物語を絡めて口から口へと伝えてきたのだ。
地名には、こうした誰とも知れぬ人の初発の声が響き、それを呼び続けてきた人々の声が響き合って今に残っているのだと著者は言う。そうした原初の地名の「声」がどのように生まれたのかを考察したテキスト。
地勢や地形を表す「ノ・ヤマ」(野山)や、「ヤマ・カハ」(山川)などの「原景語」にはじまり、滋賀県の「シガ」、日本にはいなかった珍獣の名がついた「犀川」など、地名を構成する言葉のもともとの意味を探り、在りし日の列島の姿に迫る。
(平凡社 1012円)