「うさんくさい 『啓発』の言葉」神戸郁人著
「うさんくさい 『啓発』の言葉」神戸郁人著
企業の採用情報などに使われる人材を書き換えた「人財」という造語。「人財」の背景に流れる思想を調べると、現状維持をよしとせず、常に自分自身を更新し続けなければならないという、現代社会を覆う生きづらさとのつながりが浮かび上がってくる。著者は「人財」と呼びかける側と呼びかけられる側とが不均衡な形で結びついているのではないかと指摘する。
このようにそれを用いる側の働きかけによって、言葉のあて先となる相手の心情を変化させようとする語句を「啓発ことば」と命名。「頑張る」を「顔晴る」、「仕事」を「志事」、「企業」を「輝業」、「最高」を「最幸」と書き換えるこうした啓発ことばを取り上げ、その影響力を各界の識者らとさまざまな視点から考察する。
(朝日新聞出版 957円)