「風の中に立て」伊集院静著
「風の中に立て」伊集院静著
昨秋、亡くなった著者の人気エッセーシリーズ「大人の流儀」から珠玉の言葉を厳選した名言集。
「大人がふさわしい時計をしている姿を美しいと思う」との一文には、若者が「祖父から貰い受けた」という古い時計をしているのを見ると、「そこに大人の洒落の神髄のようなものがあると思ってしまう」と記し、若き日に父から譲り受けた時計のエピソードを添える。
ほかにも「一見、無駄と思える銭を使いなさい」「余裕がない? なら大人の男であるから懸命に、人の何倍も働けばよいだけのことだ。人間は銭が入った時、どう使うかで、或る器量は計れる」「恋はいつもかも夢中でするものでも探すものでもないよ」など。豊かな人生経験から紡ぎ出された言葉が、読者の心に寄り添い、そっと励ます。
(講談社 1100円)