「令和元年のテロリズム」磯部涼著
「令和元年のテロリズム」磯部涼著
平成から令和への改元の年に起きた凶悪事件を追ったルポルタージュ。
改元直後の5月28日朝、スクールバスを待っていた私立小学校の児童や保護者ら20人が殺傷された川崎殺傷事件は、20年間自宅にひきこもりの末に犯行に及んだ犯人が直後に自殺しており事件の真相は迷宮入りしたまま。
著者はその生い立ちから犯行に及ぶまで、犯人の人生をたどりながら、この事件が「ひきこもり」や「高齢化社会」「8050問題」などの政治的問題を社会に突き付けた点でテロリズムだったとは言えないかと問いかける。
ほかにも、元農林水産省事務次官長男殺害事件や京都アニメーション放火殺傷事件などを検証しながら、私たちが生きる令和という時代の影を浮き彫りにする。 (新潮社 693円)