「底惚れ」青山文平著
「底惚れ」青山文平著
武家屋敷で一季奉公を重ねてきた俺は今、とある貧乏藩の御老公の隠居所で働いている。とはいえ、御老公はお家の事情で隠居させられた21歳の若者だ。
ある日、俺は暇を出された下女の芳を実家の相模に送り届けるよう命じられる。芳は御老公の夜の相手を務め、子まで成したが、後継ぎ問題を恐れた側近に暇を出されたのだ。芳が不憫でならない俺は、その情報を金に換え、芳に渡すつもりだ。
了解を求められた芳は、その夜、俺を刺して遁走。芳は御老公に「底惚れ」していたようだ。九死に一生を得た俺は、芳が実家に戻っていないことを知る。俺を殺したと思い込んでいるのだろう。芳が女郎屋に身を沈めているとにらんだ俺は、その行方を探す。
柴田錬三郎賞・中央公論文芸賞をダブル受賞した時代長編。
(徳間書店 880円)