ホラーの帝王 ~スティーブン・キング~
最新作はクライムサスペンス 先が読めず驚きの連続
最新作は『ビリー・サマーズ』(文藝春秋:上下各2970円)です。内容は、あっと驚くクライムサスペンス。
引退を考えていた殺し屋の主人公ビリーに多額の報酬を伴う狙撃の仕事が舞い込んだ。ビリーは事前に町の住民となって仕事の日を待つ。自由に動くために小説家に身をやつしたうえで仕込みを始めるのだが、小さな歪みを感じて予定とは異なるプランを用意しつつ、狙撃の機会を待つ──。
なにしろ先が読めない。上巻は読みながら先の展開を予想できるのですが、下巻に入ってからは驚きの連続。リアルな描写と相まって頁を繰る手が止まらない。さすが帝王。
ファンのためのサービスも忘れない。多くの幽霊が出るという焼け落ちたホテルが景観荘だとか、そこの動く生け垣とか、ピエロが出てきたりする場面など、思わず口角が上がってしまう。
ひと夏かかっても、そのぶんキングの世界を満喫できる作品なのです。