「戦争ミュージアム」梯久美子著
「戦争ミュージアム」梯久美子著
各地の「戦争を伝える、平和のための資料館や美術館」を訪ね歩くルポ。
広島県の「大久野島毒ガス資料館」は、世界で唯一の毒ガスに特化した施設。資料館がある大久野島で陸軍が毒ガス工場を稼働させたのは1929年。毒ガスの製造は軍事機密で、当時の地図には島は載っておらず、その存在は隠され続けてきた。敗戦まで6600トン以上の毒ガスが製造され、現在も日本は中国各地に残してきた毒ガスの処理費用を負担している。
資料館とその周囲に広がる多くの遺構を巡りながら、毒ガスを含む化学兵器が用いられている現代の戦争に思いをはせる。
以後、特攻隊員を多く輩出した予科練の記録を残す茨城県の「予科練平和記念館」など、14施設を巡り、展示された「もの」たちがかたりかけてくる声に耳を澄ます。 (岩波書店 1012円)