「緋あざみ舞う」志川節子著

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「緋あざみ舞う」志川節子著

 向島の船宿「かりがね」を営むお路とお律は、評判の美人姉妹。表の商売が繁盛する一方で、彼女たちには江戸を騒がす「緋薊」という名の盗賊の裏の顔もあった。

 盗みに入る先の男を落とす手腕を持つ姉のお路は、武家の息子といい仲になった妹のお律のことや、幼い頃に失明したため芸で生きていけるよう音曲の修業に出した三女のお夕のことをいつも気にかけている。

 そもそも、お路とお律が裏稼業に手を染めるきっかけになったのは、浜岡城下で廻船問屋「黒川屋」を営んでいた父・久右衛門が不可解な死を遂げたことにあった。武家でもない町人の父親が、何らかの不祥事の責任を取らされて切腹したという話に納得できなかった2人は、ある噂を聞きつけ、父の無念を晴らすべく動き始める……。

「七転び」で第83回オール讀物新人賞を受賞してデビューした作家による最新作。

 美しい花を持ちながら棘のある葉で身を守るアザミの花に、自身の境遇を重ねる美人姉妹が魅力的。生きるために身に付けた知恵としなやかな身のこなしは、まさに大江戸版キャッツ・アイだ。

(文藝春秋 1980円)

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