「『人は右、車は左』往来の日本史」近江俊秀著
「『人は右、車は左』往来の日本史」近江俊秀著
昭和24年の第5回国会で、道路交通取締法の改正が議論された。それまで歩行者は道路の左側を歩くことを法律で決められていたのだが、右側に改めることになったのだ。江戸時代は武士同士がすれ違うとき、刀の鞘(さや)がぶつかる「鞘当て」を避けるため、左側通行になったという。
逆に、右側通行が行われていたという資料もある。江戸時代に来日したエンゲルベールは、東海道で江戸に向かう者は道路の右側を通り、江戸から引き返す者は左側を通っていたと、「絵で見る幕末日本」(茂森唯士訳)に記している。
多人数の者が通る参勤交代のときはどうするのかなど、歴史資料から見えてくる日本の往来事情。 (朝日新聞出版 1980円)