「ぶらり謎解き浮世絵さんぽ」牧野健太郎著
「ぶらり謎解き浮世絵さんぽ」牧野健太郎著
本書は、世界で一番美しいといわれている米国ボストン美術館の浮世絵コレクションのデジタルデータを活用。細部の拡大などを紹介しながら、絵師や職人が浮世絵に秘めた謎を解き、当時の生活のリアルに迫る。
まずは歌川広重の人気シリーズ「名所江戸百景」から当時の重要なランドマークで生活の要であった橋を描いた作品に注目。
吊るされた亀が富士山を遠望する「深川萬年橋」や、雪の降る夜にかさをかぶった商人が大きな振り分け荷を担いで橋を渡ろうとしている姿を描いた「びくにはし雪中」などの作品を取り上げ、亀はなぜ、どこに吊るされているのか、商人の担いでいる荷物は何か、さらに通りに張り出した看板の「山くじら」や「十三里」とは何か。それらを解説しながら、当時の習俗や食べ物などが、まるで江戸にタイムスリップしたかのように細部にわたって紹介される。
もちろん、蔦重が版元になってプロデュース、そして販売した喜多川歌麿が恋に揺れる人妻を描いた「物思恋」や、浄瑠璃の師匠や茶屋の看板娘などを描いた「当時三美人」なども登場。
(エクスナレッジ 2420円)