「孤城 春たり」澤田瞳子著
「孤城 春たり」澤田瞳子著
筆硯とそろばんの才しかない商家出の陽明学者・山田方谷は、備中松山藩の藩校、有終館の学頭を務めていた。備中松山藩は石高5万石とされていたが、実態は1万9300石に過ぎず、財政難にあえいでいる。倹約令を出し、ぜいたくな服装を禁止するなど厳しい締め付けをしているが焼け石に水だ。
そのような状況で、山田方谷は藩の財政を担当する元締役と、その補佐役の吟味役を兼務するよう命じられた。藩内には方谷を妬む者も少なくない。20年前に藩校が火事になったときも、隣の方谷宅からのもらい火だという噂も立った。
借財10万両の藩の財政を立て直し、10万両の蓄財を実現した幕末期の備中松山藩の改革を描く。
(徳間書店 2420円)