今、なぜ若尾文子なのか 大映時代の出演作一挙上映の真相
若尾文子が時ならぬブーム――。大映時代の彼女の出演作を集めて上映する「若尾文子映画祭 青春」が27日から、新宿の角川シネマ新宿で開催される。上映本数はなんと60本。若尾にとっても、一人の俳優としても、かつてない規模の上映である。
作品をちょっと並べてみると、その多くが映画史の中で重要な位置づけのものばかり。「祇園囃子」「赤線地帯」「しとやかな獣」「雁の寺」「『女の小箱』より 夫が見た」「卍」「氷点」「刺青」「華岡青洲の妻」などまさにキラ星のごとく。
大映作品の権利を現在所有するのはKADOKAWA。同社が一人の俳優で、これほど多くの作品上映を集中的に行うのは、同じ大映出演作品の多い市川雷蔵ぐらい。
では、なぜ今、若尾文子なのか。
今も現役バリバリでCMに登場し、知名度が高い。テレビなどに登場するときの着物姿が、あでやかさと可愛さを兼ね備えていて、若い世代にも好印象を与えている。加えて、大映時代の彼女の出演作がDVDなどで今も人気を誇っている。しかも、監督は溝口健二や吉村公三郎、山本薩夫、増村保造、川島雄三といった巨匠、名匠で、一本一本のクオリティーがとても高いのである。