本紙名物漫画「やる気まんまん」 原作者の牛次郎さんは今
かつて日刊ゲンダイ本紙の人気連載漫画だった横山まさみち画「やる気まんまん」。1977年から96年まで足かけ20年続いたが、原作者といえば「釘師サブやん」「包丁人味平」といった人気コミックも手がけた牛次郎さん(78)だ。さて、今どうしているのか?
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「え、ゲンダイ? 『あの人は今』? 冗談だろう? まだ現役なんだからさ。アハハハ」
電話で取材を申し込むと、受話器の向こうから明るい声が返ってきた。
記者が向かったのは伊豆半島東海岸、静岡県伊東市伊豆高原。最寄りの伊豆急・富戸駅から車で4分ほどの高台にある禅宗の転法輪山願行寺だ。肩書は管長。なんと牛込覚心の僧名を持つバリバリの僧侶になっていた。
「熱海にある名刹・臨済宗妙心寺派医王寺で出家・得度したのが86年11月。46歳の時でね。それから土地を探しに探してご縁があったのがここ。敷地は約1300坪で、本殿、庫裏他、建物は僕が設計して開山は89年だね」
そもそも、なぜ僧侶に?
「たまたま書店で手に取った『織田・仏教用語辞典』という専門書を見てタマゲタ。僕の本名は牛込記と言うんだけど、その辞典に『記』とは『釈迦が、弟子が悟ったか否か判別すること』とあった。それまで自分の名前のいわれを親に尋ねたことがなかったし、変わってるな……ぐらいにしか思ってなかったからね。初めて親の胸の内を知った思いがしたよ」
霊媒師だった祖母と母に反発して宗教嫌いで通してきたが、以来、仏教書をむさぼるように読破。そして医王寺で修行を積み、出家、得度に踏み切った。
「得度式は医王寺本堂で厳粛に行ったんだけど、その後の宴席は熱海だから芸者衆を呼んで、飲めや歌えでハッチャケた。そうしたら『こんな賑やかな得度式は初めて』って禅宗界で大評判だったよ。アハハハ」
宗派性にこだわらない寺院運営を目指し、単立宗教法人の認証を3年かけて取得。晴れて開山にたどり着いた。
「でもウチは新規なんで、最初は檀家がまったくないでしょ。だから預金から持ち出し持ち出しで火の車。2年前に心臓発作で亡くなった家内が二人三脚で手伝ってくれてなかったら、開山どころか間違いなく破産してたね」
3年前、都内で演劇指導をしていた長女(45)がUターンして仏門に入り、今は覚演を名乗る住職に。牛さんの右腕として宗務全般を切り盛りしつつ、中高年向けワークショップを開催している。