【診断がつかない症状】 千葉大学医学部付属病院総合診療部(千葉市中央区)
「よくある病気で見逃されやすいのは、症状の出ている場所と原因臓器が離れているような場合です。頭痛の原因がうつ病だったり、肩の痛みが肝周囲炎という性病で起きることもあります。吐血や片腕に多数できた病変が、自作自演の虚偽性障害(心の病気)というケースも結構あります」
心のストレスは痛みの閾値を下げる。全身の痛みの原因が、飼い犬が死んだことによるペットロス症候群だったケースもあるという。
珍しい病気でも典型症状と違う場合がある。毎月2回、決まって右膝が腫れる症状で来院した女性の場合は、周期的に発熱症候群が起こる家族性地中海熱だった。普通なら腹痛、胸痛、高熱が典型症状だが、婦人科から紹介されたことがヒントになり、生理と排卵の時期に症状が表れることを突き止めた。膝だけが繰り返し腫れる症例は日本人の患者では初めてだ。
「私たちが診察で注目するのは、患者さんが受診するまでの行動や前医の受診歴です。そこに診断のカギがあるからです。診断のつかない病気は検査で分かるのではなく、患者さんから引き出した言葉にキーワードがあるのです」