新規の放射線内用療法で末期前立腺がんの生存期間を延ばす
それが特に骨転移を起こしやすい前立腺がんの場合、α線の放射線を出す「塩化ラジウム―223(ゾーフィゴ)」という選択肢が増えたわけだ。
「ゾーフィゴの何が画期的かと言うと、痛みの緩和効果だけでなく、末期の前立腺がんの患者さんでは生存期間が延びることです。国際共同第Ⅲ相試験のデータでは、生存期間が約4カ月延び、死亡リスクが30%低下するとされています」
同科がゾーフィゴの治療を始めてまだ1年3カ月ほどだが、実施数は24人で国内トップクラス。患者の経過をみると、半数弱は前立腺の腫瘍マーカーであるPSA値が下がり、骨転移のマーカーであるALP値はほとんどの患者が下がっているという。
従来のβ線に比べてα線のがんに対する破壊力は7000倍と強力。それでいて、体内でα線の力が届く距離は0・1ミリ未満(β線は数ミリ)と短い。そのため正常細胞に影響を及ぼすことは少ないとされている。
「注意する副作用として、骨髄抑制(血液成分の減少)や悪心、下痢、嘔吐、食欲不振などが挙げられていますが、いまのところ患者さんに心配されるような副作用は出ていません。体内に入った放射線を出す物質は、骨転移の部分に付かなかったものは便に排出されてしまいます」