精巣がん<3> 転移がん手術後2カ月で間質性肺炎を発症
担当医は内科治療を選択した。点滴で1日に1000ミリグラムのステロイドを挿入するという「大量パルス治療」が続けられた。さらに、点滴で免疫抑制剤も投与され、ようやく肺胞の炎症拡大が止まる。
この間、約1カ月間の入院治療。がんの治療でこの1年間に6回の入退院を繰り返し、最長15時間の手術にも耐えた。生死をさまよう大久保さんを生還させた担当医、看護師チームの渾身の医療努力もある。
家族に迎えられて退院するとき、入院病棟の玄関先まで、医師や看護師たちが総出で見送ってくれた。
このとき、大久保さんの背中に投げかけられた医師の一言が忘れられないという。
「大久保さん、もうここ(病院)に戻ってきてはダメだよ!」
退院後、自宅で半年間静養し、その後、勤務先の「ゴールドマン・サックス社」にも復職し、2009年10月、通院で行われていた治療のすべてが終了した。
病気前に打ち込んでいたマラソンに復帰するためにウオーキングをスタート。11年10月、諏訪湖マラソン(ハーフ)完走。12年4月には「かすみがうらマラソン」(42・195キロ)に参加し、13年6月には北海道「サロマ湖100キロマラソン」も完走した。
年に2回、病院で定期的な検診を受けているが、原発の精巣がんの手術から今年でちょうど10年。5年生存率を2度もクリアした。