大腸がん新知見 原発病巣は右より左の方が生存期間が長い
従来は2つの分子標的薬の有効性に有意差はないとされていたことから、どちらを先に使うかは各医師の判断で決めていた。それが有効性に左右差があることが分かったことで、薬の選択がよりクリアになったという。
「大腸がんは他のがんと異なり、ステージⅣで転移していても病巣を切除できれば、予後が極めて長く延びるケースが少なくありません。ですから薬物療法の1次治療でがんをかなり縮小できれば、手術で切除できる場合があります。そのためにも大腸がんの左右差は非常に有用な情報です。RAS遺伝子に変異のない左側の大腸がんであれば、ステージⅣでも長期生存を目指せるのです」
また、右側の大腸がんは予後が悪いことが分かっているので、最近は1次治療から最強の治療といわれる「4剤併用療法」を行う医師が増えてきているという。
しかし、なぜ大腸がんには左右差があるのか。そもそも大腸は発生学的にも右大腸は「中腸系」、左大腸は「後腸系」と異なる由来を持ち、支配する血管も違うとされる。
「世界的にも左と右では、がん化の過程が違うという認識です。がんは遺伝子変異の塊ですが、その遺伝子変異の種類や仕方が違うということです。右原発巣では予後不良と関連がある遺伝子の変異頻度が高く、左原発巣では抗EGFR抗体の感受性に関する遺伝子の発現頻度が高いことが示されています」