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名郷直樹「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

「健康」も「見た目」も平均は嫌悪され極端が目指される

公開日: 更新日:

 肥満と痩せの問題を、健康と重ねて考えると、そこには大きなねじれがあります。

 最も長生きとされるBMI25以上の人が何とか痩せようと考えていたり、若い女性が最も不健康な18.5未満を目指してダイエットに励んだり……。こうした状況は、健康を志向する行動とは真逆です。その理由は、見た目の問題など、健康以外の要素を考慮しなければ説明できません。

 そもそも私には痩せているほうが見た目に好ましいというのも、実はよく分かりません。痩せていないとファッションモデルになれない、というのもどんな起源があるのでしょうか。

 2017年5月にフランスで、モデルの健康に配慮して、極端に痩せているモデルたちの活動を禁止する法律が施行された、というニュースがありました。

 現場のモデルはこうしたニュースをどう受け止めているのでしょうか。あるいは痩せたいという若い女性たちはどうでしょう。

 少なくとも、多くのモデルが平均的な体形となって、健康を重視するという方向には抵抗があるのではないでしょうか。そこには一般の世の中では見ることのできないものに価値をおくという基本的な原理があるように思えてなりません。出てくるモデルの誰もが、どこでも見かけるような体形をしていたら、誰もそんなファッションショーを見に行かなくなるのではないでしょうか。

 健康も、見た目も、平均が嫌悪され、極端が目指される。そうまとめると、肥満や痩せと健康のねじれの問題も、案外極端な健康志向と同じことなのかもしれません。

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