名郷直樹
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名郷直樹「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

収益に偏りがちになる製薬会社の立ち位置を考慮すべし

公開日: 更新日:

 血圧を問題にするのは、それが脳卒中心筋梗塞のリスクになるからです。「130は血圧高めです」というのも、少しでも多くの脳卒中や心筋梗塞を予防したいという面があります。そこに限れば、「テレビのコマーシャルもいいこと言っているじゃないか」というわけです。

 ところがそれは治療効果や副作用、コストなどを含めて考えないといけない厄介な問題で、手放しにどんどん宣伝してくれというものではないことを説明してきました。

 さらにここにはもうひとつ避けがたい大きな問題が潜んでいます。製薬会社などの問題です。メーカーは、血圧が高い人に血圧を下げるための健康食品や血圧の薬を飲んでもらって、脳卒中を減らすだけでなく、企業としても収益を上げるということがあります。

 上の血圧は130でもリスクが高いのだから、薬とはいかないまでも、健康食品を買って飲んでくれたら、企業としてこんなありがたいことはない。脳卒中も予防できるし、収益も上がるし、そう考えるのは至極もっともなことです。

 しかし、どうしてもメーカーは治療効果や副作用よりも収益のほうに偏りがちになります。そこで問題になるのは私たちのほうです。医療者や患者は、企業がそういう背景で「130は血圧高めです」といっていることをよくわきまえて、こちらはこちらで冷静に、実際の治療効果や副作用やコストを考慮したうえで、どうするか決める必要があります。でも大体はメーカーの宣伝で不安になって、医者にかかったり、健康食品を買ってしまうんですよね。残念ながら。

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