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名郷直樹「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

リスクも薬の効果も予測不可能 血圧に正しい値なんてない

公開日: 更新日:

 血圧のリスクも実は曖昧で、血圧の薬の効果もそうです。ただ確率的には、血圧が高いほうが脳卒中心筋梗塞が多く、血圧の薬を飲んでいる人のほうが、それらの合併症が少ないというだけです。個人個人で何が起きるかはよくわからない。曖昧というより、ほとんど予測不可能といったほうがいいかもしれません。

 さらに問題は、血圧の値自体が曖昧です。測るたびに血圧が違うというのは、血圧を測っている多くの人が実感していることでもあるでしょう。ある時は100㎜Hgだった上の血圧が、ある時は180㎜Hgなんてことも珍しくありません。家で測ったときに比べて、医療機関で測ったら50も高かったというのはもっともありふれた状況でしょう。

 血圧はもともと変動が大きく、私の血圧はこれくらいですとはなかなか言えません。興奮すれば上がりますし、食後は下がります。睡眠不足は血圧を上げます。血圧の測定はさまざまな変動の原因を一定にするようにして測らなければ、評価が困難です。

 そのため国民健康・栄養調査でも、血圧の測定方法は一定の配慮がなされ、測定前の運動食事、たばこ、寒冷暴露など、血圧測定値に影響があると考えられる条件を避け、あらかじめ排尿させ、測定前5分以上の心身の安静をとった後に背もたれのある椅子で測定、となっています。

 血圧測定の曖昧さをできるだけ避けるためには、少なくともここに挙げたような方法で血圧を測る必要があるのです。
次回からはその曖昧な部分について、できるだけわかりやすく、データを示しながら説明していきたいと思っています。

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