「死の恐怖を乗り越える術」多くの患者に出会い考えたこと
悪性黒色腫にさいなまれ続けた宗教学者の岸本英夫氏は、著書「死を見つめる心」の中で「死を無である」とし、これを「大きな別れ」と解するとしています。これはかなりの説得力を感じ、参考になるように思われました。
さらに私は、奈落に落ちたが這い上がったと思われる患者に、「どうして這い上がれたか」を聞いてみることにしました。そうした患者の言葉の中で、最も心に残ったヒントは「心の奥には必ず這い上がれる心がある」ということでした。
私は拙著「がんを生きる」の中でこの点を取り上げました。そして、自然に天寿を全うした方が「恐怖でない死」を得られるように、がんで亡くなるとしても安寧な心が表れることはできないのか。それを模索することにしたのです。
次回もお話を続けます。
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