著者のコラム一覧
和田秀樹精神科医

1960年6月、大阪府出身。85年に東京大学医学部を卒業。精神科医。東大病院精神神経科助手、米カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。著書多数。「80歳の壁」(幻冬舎、税込み990円)は現在、50万部のベストセラーに。最新刊「70歳の正解」(同)も好評発売中。

認知症の進行と関係 聴力と視力の衰えには積極的な対応を

公開日: 更新日:

 老化による聴力の衰えを改善することはむずかしいが、進行を遅らせることは可能だ。親に耳鼻科を受診させ、場合によっては補聴器の使用を考えたほうがいい。聴力の衰えはさまざまな問題を引き起こす。「正確なメッセージが伝わらない」「聞き間違いによるトラブルが生まれる」「本人も周囲も話す時の声が大きくなる」などだ。ほとんどの人間は声が大きくなると、本人の感情とは関係なく、声のトーンは怒りのニュアンスを帯びる。笑顔のまま大声で怒るパフォーマンスが可能な俳優の竹中直人さんとは違うのだ。耳の遠い親と声の大きな子どもの会話はしばしば親子ゲンカのようになってしまう。となると、親子ともども会話がおっくうになり、次第にコミュニケーションの機会が減る。やがて「どうせ、わかってくれない」となり、親子関係に深い溝が生じてしまう。

 高齢者にとって補聴器は老いの象徴のように思えて、抵抗感が強いかもしれない。子どもは「もっと話がしたい」「わかり合いたい」という気持ちを伝えて優しく諭してみることだ。

 スムーズなコミュニケーションができないということは、人生をつまらなくしてしまう。ひと昔前と違い、補聴器の性能も飛躍的に向上しているし、装着しても目立たないものもある。高齢の親に機嫌よく生きてもらい、円滑な親子関係を紡ぐためにも補聴器の使用をポジティブに考えるべきだろう。

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