「医療安全」と「EBM」は医療従事者を守るという側面もある
こうした医療安全やEBMに対する考え方は、医療機関の経営にとっても重要です。医療機関にとって最も理想的なのは、「ひとつの治療に対する患者さんの在院日数が少ない」状態です。そのためには、合併症や後遺症をつくらないようにすることが大切です。ひとつの疾患に対してばちっと当てはまる治療を行って、合併症も後遺症もなく、患者さんが純粋に回復して健康的な生活を取り戻せれば、次から次へと新しい患者さんが訪れる好循環が生まれます。患者さんを守る医療安全やEBMは、その好循環をつくり出すために欠かせない考え方なのです。
逆に、医療安全やEBMを軽視して1例ごとに問題を起こしてしまうと、入院が長引いてしまううえ、問題に対処する医療経費もかさんでいきます。経営的な観点で言えば、利益が出にくくなってしまうのです。
また、医療安全やEBMにのっとらない形で医師や看護師ら医療従事者が患者さんとの間でトラブルを起こしてしまうと、本業である医療以外の分野で多大な労力を使うことになります。場合によっては訴訟を起こされ、弁護士と対峙するケースもあり得るのです。これでは、本業がおろそかになってしまいます。
医療安全やEBMは、患者さんを守るだけでなく、医療機関や医療従事者を守るという側面もあるのです。