いつまでも口から食べたい<下>元気なうちに家族と話し合う
それをもとに、専門家に限らず家族も含めた多職種連携で、当事者の弱い部分はケアやサポートを行い、強みとなっている部分は引き出しながら口から食べられるようにアプローチしていく。評価点がレーダーチャートで示されるので、何をどのようにしていけばいいか、関わりの方向性を見いだすこともできる。この評価方法は信頼性・妥当性が検証されており、日本摂食嚥下リハビリテーション学会でも「包括的評価ツール」として紹介している。
口から食べることは、本人の基本的欲求を満たし、「おいしい」という情動が幸せな気分をもたらす。それが大脳皮質連合野や扁桃体といった脳の機能を活性化させる。また、口から食べる命令は脳が司令塔になっているので、食べないことで脳機能低下にさらに加速がかかる恐れがある。
一方で、消化管の機能が悪化していたり、吸引の処置を施さなければいけなかったりなどすると、口から食べることが苦痛の助長につながってしまう。心身が衰弱している人では、食べることのメリットを十分に得られず、そればかりか、誤嚥性肺炎を繰り返し、食べること自体が苦しみになりかねない。