著者のコラム一覧
坂本昌也国際医療福祉大学 医学部教授 国際医療福祉大学 内科部長・地域連携部長

専門は糖尿病治療と心血管内分泌学。1970年、東京都港区生まれ。東京慈恵会医科大学卒。東京大学、千葉大学で心臓の研究を経て、現在では糖尿病患者の予防医学の観点から臨床・基礎研究を続けている。日本糖尿病学会、日本高血圧学会、日本内分泌学会の専門医・指導医・評議員を務める。

低血糖対策に 鼻にシュッとすればOKの点鼻剤グルカゴン登場

公開日: 更新日:

 点鼻剤のグルカゴンを発売した製薬会社「日本イーライリリー」によれば、糖尿病患者の介護者(糖尿病患者の同居家族)20例を対象にした国内単一施設非盲検部分的クロスオーバー模擬投与試験で、点鼻剤のグルカゴンと注射剤のグルカゴンについて、それぞれ使用法の説明を受け、同居家族がマネキンへ模擬投与を行ったところ、点鼻剤のグルカゴンを模擬投与した89・5%が全量投与に成功。模擬投与完了までの平均時間は24秒でした。

 低血糖は「糖尿病患者なら、だれでも起こす可能性がある」と冒頭で述べました。確実な予防策があればいいのですが、残念ながら低血糖の予防策はありません。糖尿病の治療は血糖値を下げることが目的だからです。それがうまくいきすぎると、今度は低血糖のリスクが出てくるのです。

 血糖値を下げる薬の中には比較的低血糖を起こしにくいものもあれば、低血糖を起こしやすい薬もあります。低血糖のことだけを考えるなら前者の薬を使えばいいのですが、患者さんの中には、それでは十分に血糖コントロールを行えず、やむを得ず低血糖を起こしやすい薬を使わざるを得ない人もいるのです。

 血糖を下げる薬はさまざま出ているのに対し、低血糖に対してはブドウ糖注射液のグルカゴン、あるいは救急車を呼ぶしか手がなかったので、点鼻剤のグルカゴンが発売された意味は大きいと思います。

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