著者のコラム一覧
天野篤順天堂大学医学部心臓血管外科教授

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

新型コロナと闘ういまの日本には「柱」が見当たらない

公開日: 更新日:

 臨床に携わっている立場からすると、米国のCDC(疾病対策センター)のような組織が日本にも必要だと考えます。CDCは米国の連邦機関ですが、政府と独立して機能する専門家集団です。疾病の予防と管理、環境衛生に関する活動など、健康に関する信頼できる情報の提供と強力なパートナーシップを通じた健康の増進を目的として、主導的な役割を果たしています。日本にも、国立感染症研究所という国の機関があります。しかし、予算も含めた規模が小さすぎるうえ、人材も不足しています。CDCのような強い独自性はなく、指示を受けて動くことがほとんどです。今回のような未知のウイルス感染症への対応を想定した設置目的ではなかったため、自主的に機能をリセットさせて感染対策を講じたり、その先にある収束を築くことができないといえます。

 今回、緊急に設置された新型コロナ対策分科会もそうですが、これでは、強い覚悟と責任感を持った「柱」は出てこないでしょう。未知のウイルスに対応するためには、やはり、CDCのような機関が必要です。

 同時に、国の原子力政策を推進する「原子力委員会」と、安全確保のために規制・監視に関わる「原子力規制委員会」のように、いまの新型コロナ対策分科会や将来的な日本版CDCに対して拮抗する専門家組織の設置も望まれます。人員には十分な待遇を充て、今回で言えば新型コロナだけに集中して、それぞれがしっかり対策を講じる役割を与えるのです。こうした体制が整備され、覚悟と責任感を持った「柱」が生まれれば、国民も信頼して対策に取り組めるようになるでしょう。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  2. 2

    “氷河期世代”安住紳一郎アナはなぜ炎上を阻止できず? Nキャス「氷河期特集」識者の笑顔に非難の声も

  3. 3

    不謹慎だが…4番の金本知憲さんの本塁打を素直に喜べなかった。気持ちが切れてしまうのだ

  4. 4

    バント失敗で即二軍落ちしたとき岡田二軍監督に救われた。全て「本音」なところが尊敬できた

  5. 5

    大阪万博の「跡地利用」基本計画は“横文字てんこ盛り”で意味不明…それより赤字対策が先ちゃうか?

  1. 6

    大谷翔平が看破した佐々木朗希の課題…「思うように投げられないかもしれない」

  2. 7

    大谷「二刀流」あと1年での“強制終了”に現実味…圧巻パフォーマンスの代償、2年連続5度目の手術

  3. 8

    国民民主党は“用済み”寸前…石破首相が高校授業料無償化めぐる維新の要求に「満額回答」で大ピンチ

  4. 9

    野村監督に「不平不満を持っているようにしか見えない」と問い詰められて…

  5. 10

    「今岡、お前か?」 マル秘の “ノムラの考え” が流出すると犯人だと疑われたが…