キングカズにならう 嫌みを激励に変える「無効化」のすすめ
無効化の好例としてサッカー選手のキングカズこと三浦知良さんの発言があります。
元プロ野球選手の張本勲氏が、キングカズが現役を続けていることに対して、「若い選手に席を譲らないと。団体競技だから伸び盛りの若い選手が出られない。だから、もうおやめなさい」という発言をしたことがありました。
この発言を受けて、世間は「余計なお世話」「老害発言」などメディアも巻き込んでの論争になりましたが、当の本人、キングカズは「張本さんほどの方に言われるなんて光栄です。『もっと活躍しろ』って言われているんだなと思う。『これなら引退しなくていいって、オレに言わせてみろ』ってことだと思う」と発言し、張本氏の「侮辱」の言葉を「激励」にすり替えて、攻撃力を完全にそいだのです。この発言には、世間も当の張本氏も絶賛し、無事に落着を迎えました。
人と人との会話は相互行為であって、誰かが発した言葉の意味は発した瞬間に確定するものではありません。何かを言った時、自分なりに思う意味は頭の中に生まれますが、それは「相手に、こう思ってほしい」というイメージや希望でしかなく、必ずしも他者が自分が意図した意味合いで受け取ってくれるとは限りません。会話における言葉の意味とは、あくまで相手に渡った時に決まるのです。