死が迫ったとき、「信仰」は本当に恐怖を和らげているのか
M先生は、出身高校も大学も同じ先輩でした。私が病院に勤めてから初めてお会いし、勤務する科は違いましたが、同じ病院で30年以上たくさんご指導いただき、言い尽くせないほどお世話になりました。
あるとき、私は仕事がうまくいかずに病院を辞めたいと思って、M先生の部長室を訪ねたことがありました。私が話を切り出す前に、M先生は明るい顔でこんなお話をされました。
「CT画像と原体照射、国際学会でゴールドメダルをいただくことになったよ」
「今、これからのがん治療で、こんな夢を持っているんだ」
先輩がこれほど頑張っているのに……私は暗に励まされ、何も言い出せないまま、すごすごとM先生の部屋を後にしたことを思い出します。
M先生は、定年退職された後にステージ3の肺がんを患われ、手術を受けた後、ご自身が専門とされていた放射線治療を受けました。治療後5年が経過して肺がんからは完治されましたが、それから3年ほどで亡くなられました。