ヘルスケア分野で活用される人工知能 当面は医師のサポート役
昨年は心電図を計測できるスマートウオッチが、日本でも医療機器として承認された。血中酸素飽和度を測れるスマートウオッチの登場も、時間の問題だ。
そうしたデータが揃えば、循環器や呼吸器の異常、さらには新型コロナ肺炎の発症までも、AIで判定することが可能になる。
この場合、100%正しい診断を出す必要はない。異常を検出し、ユーザーに病院の受診を勧告するまででいい。あるいは未病の段階で、運動を促したり、サプリメントを提案したりできれば十分である。フィットネス業界やサプリメント業界とタッグを組むことにより、大きなエコシステムを構築することさえ視野に入ってくる。
ただしAIのアプリ本体が、スマートフォンに搭載されるわけではない。AIサービスを行う民間企業の、どこかのサーバー(日本国内に置かれているとは限らない)にデータが自動的に送られ、強力な人工知能で処理される。スマホのアプリは、データの送受信を仲介し、AIの診断結果を表示するだけである。
もちろん、ユーザーにとってはそれで十分だろう。だがAIサービスを行えるのが、GAFAなど海外のIT企業に限られる可能性が高いため、日本経済にとっては必ずしもプラスではないし、日本人の健康情報が海外の企業に吸い上げられることも問題だ。
日本国内の通信はすべて大手キャリアーが握っているし、家庭用血圧計や体温計などの国内メーカーも揃っている。すべて国産で揃えることが可能なのだから、日本企業にはもっと大きな視野に立って、戦略的にビジネスを展開して欲しいところである。