名画「愛と哀しみの果て」では語られなかった主人公の感染症
ただし、サルバルサンは副作用が強い、という欠点がありました。そのためすぐにネオ・サルバルサンが作られ、梅毒治療が進むようになります。1928年にペニシリンが発見され、動物実験を経て抗菌作用が1940年に発表され、1942年にベンジルペニシリンが実用化されるまでは、サルバルサンが梅毒の標準的な治療薬だったのです。
年代から考えれば、カレンがサルバルサンを使っていた可能性はあります。ただ当時の状況を考慮すると、性感染症を患ったとはいえ男爵夫人が簡単に治療に向かうとは思えません。その後、ペニシリンを使ったことも考えられますが、治療の遅れから効果が出なかったのかもしれません。
結婚した男性は、よそで性感染症をもらうと妻にうつす可能性が高く、その場合は妻に大きな負担をかける。場合によっては妻のその後の人生をメチャクチャにする場合だってある。そのことを自覚しておくべきでしょう。