「今なら助かりますよね?」と無意識に…桑野信義さん直腸がん手術を振り返る
気づいたら集中治療室で管だらけ。それより気になったのはストーマの位置でした。手術前、医師からこう言われていたのです。
「この手術が終わってストーマが左側についていたら一生もの。右側なら仮設です。手術してみなければ、どちらになるか分かりません」
だから目覚めてすぐ看護師さんに聞いて、仮設だとわかったときには安堵しました。
入院中はコロナ禍でお見舞いの人もいないので、看護師さんと話すことが楽しみでした。ストーマ外来の若い女性の先生がストーマのカタログを持ってきてくれて、「どれがいいですか?」「これがいいかな」なんて言っている時間は、まるでデート気分でしたよ(笑い)。
■心がダメになると思い抗がん剤を中止
そんな淡い楽しみも1カ月ほどで終わり、退院後には残りの抗がん剤治療が始まりました。これが、手術前にも増してつらいのです。
抗がん剤の副作用を和らげるためのステロイド入りの点滴をしてから投与しているのに、お腹の調子は悪いし、吐き気は止まらない……食事ができない、フラフラで歩けない、気持ちもどん底に沈む。