「自死・自殺に向き合う僧侶の会」代表が語る…死んではいけない
相談の相手は女性7割、男性3割で、年齢は10~70代と幅が広い。この10年間に1700人、延べ7000回の「対話」を重ねてきた前田住職。僧侶らしい柔らかな口調で、こう語る。
「私は死にたいという人に対し、頭から否定するものではありません。ただし、自ら死ぬことはいかがなものか。なぜ死にたいのですか、その理由を一緒に考えてみませんか、生きる道を考えてみませんかと申しまして、対話を進めます」
毎年、厚生労働省(自殺対策推進室)や警察庁が発表している統計によると、自殺者数のピークは2003年で、3万4000人が自殺した。その自殺者数は年々減少傾向にあり、2020年は2万1081人だった。
月別では、学校や勤め先などの環境に大きな変化が生じる春の3月、4月に自殺者数が多い。自殺の理由は、家庭問題、健康問題、経済・生活問題、勤務問題、男女問題、学校問題などに集約されるが、苦悩している問題がいくつも重なるケースも少なくない。
「自死を望む人が100人いたら、100人とも理由が違います。この世は無常です。苦しみの中で生きてきた人が、思いあまって、わざわざお寺に連絡をしてくる。『よく頑張ってきましたね』と、まず慰労の言葉をかけて傾聴し、自死にまで追い込まれている原因を、対話を重ねながら引っ張り出します。原因を除外しなかったら、根本的な解決が難しいからです」(前田住職)