がんで亡くなった旧友の病気を知っていたら役に立てただろうか
M君は、いつもニコニコ笑顔で悩み顔を見せることはなく、美男子のスポーツマンでした。テニスが上手で、白の短パン姿がよく似合い、まぶしく見えました。私もテニスを始めてみたのですが、早々にやめてしまいました。部室でみんなが談笑して楽しんでいるのに、なかなか馴染めませんでした。もっとも、私がやめた理由はテニスが上達しなかったからだったと思います。
M君はよく週刊誌「平凡パンチ」を買ってきました。彼はアイビースタイルを好んだのか、おしゃれでした。私は洋服にはまったく無頓着で、暇があれば日本文学、太宰治の「人間失格」や阿部次郎の「三太郎の日記」などを、好んで読んでいました。
後にM君の奥さんになった方は、爽やかな長身の美女でした。2人がテニスコートで連れだって歩く姿は、友人みんなが羨む、似合いのカップルでした。