がんで亡くなった旧友の病気を知っていたら役に立てただろうか
旧友であるM君の奥さんからハガキが届きました。そのハガキには寅さんがカバンを持って歩く姿が印刷されています。そして、こう書かれていました。
「あの世から(帰ってくる)といって永遠の旅に出かけました」
「地域医療に励み……M家一族の面倒をみました。医師としていやな顔せず頑張ったと思います……全身がん発覚から4カ月で亡くなりました」
M君と私は、約3年間、同じ下宿にお世話になりました。古い家の2階に2部屋があって、それぞれM君と私の部屋でした。朝食と夕食は1階にある大家さんの居間まで下りて、畳に座って2人で向かい合っていただきました。
夜、M君の部屋でよく将来のことなどについて話しました。彼は地域の医療のこと、私は研究の道……などを話題にしました。
暗い私の部屋とは違って、M君の部屋はいつもきれいに整理されていました。アンディ・ウィリアムスの「ムーン・リバー」など外国歌手のレコードがあり、よく一緒に聴きました。私は小学生の頃、昼休み時間に劇場から町中に響く三橋美智也の歌に慣れ親しんだのですが、それとはまったく違った雰囲気でした。