物忘れが治療で改善するかどうか 認知症と高齢者うつの見分け方
高齢者のうつ病で発生する物忘れとして、仮性認知症があります。医療機関に、ご家族が高齢の親を連れてきて、「物忘れはアルツハイマー型などの認知症か、うつ病によるものなのか」と質問されるケースは多いです。
人間の脳は、ぼんやりした状態のときに「デフォルト・モード・ネットワーク」と呼ばれる状態になります。実は、集中しているときよりもぼんやりしているときのほうが脳はエネルギーを多く使っており、無意識的に思考を張り巡らせています。思考の結果が認知機能をつかさどる「ワーキングメモリー」に送られ、入ってきた情報を頭の中で保持し、覚える必要があるかどうか整理していきます。
うつ病による物忘れは「デフォルト・モード・ネットワーク」の段階で、心配事や不安が頭の中でぐるぐる回り、前頭前野が疲弊し一時的に認知機能が低下してしまうために起こります。抗うつ薬や運動療法といった治療によって、症状は改善していきます。
一方、認知症の場合、脳全体の機能が落ちていきますし、進行は止められません。
高齢者のうつ病と認知症にはそれぞれの見分け方があります。