年の暮れに届いた喪中はがきで頭に思い浮かぶ旧友との思い出
電話の声は、意外とさばさばしていたように感じました。きっとS君をたくさん看病され、彼の「気ままさ」をたくさん支えられたのだと思います。
■がんはいつ制圧できるかとしつこく聞かれ…
S君は何かと規格外のところがありました。あけっぴろげで、悩んでいるようなところを見たことがありません。ほら吹きのようなところもありましたが、いつも明るいのが私にはうらやましい性格に思えました。とりわけ、高校野球が好きでした。やたらと故郷の高校を自慢していました。
学生時代、下宿は一緒ではありませんでしたが、日曜日になるとバットとグラブを持って、朝早くから野球に誘ってきました。私の下宿まで迎えにくるのです。数人が集まって、大学のグラウンドで練習をしました。彼はみんなが嫌がるキャッチャーをやってくれました。中には野球の理論とか、バットの持ち方とか、うるさく言うやつもいましたが、S君は一緒に楽しく汗をかきました。
S君は、あまり食べずに酒を飲みました。そして、田舎の自慢を繰り返し話します。日本酒が大好きでした。人柄はとてもいい男ですが、酒を多く飲み過ぎると目がすわった感じになって、同じことを繰り返し言ってきます。