負担が少ない低侵襲治療を受けるなら裏にあるリスクを知っておく
しかし、MICSなどの低侵襲治療のエビデンスは、「すでにエビデンスが確立している従来の治療の成果と同じ内容が提供できたら」という前提付きなので、両者を安易に同じものと捉えるのは間違いです。効果と安全性に対する信頼性は、従来の治療法のほうが高いといえるでしょう。
また、低侵襲治療の進め方についての判断は術者に委ねられています。ですから、技術が不足していたり、経験の浅い医師が低侵襲治療を行った場合、従来の治療法よりも不十分な内容になり、患者さんにとって不利益が大きくなるリスクもあります。低侵襲治療の多くは狭い視野の範囲で実施されるため、ちょっとした問題が起こったときでもリカバリーしづらく、従来の治療と比べて大きなトラブルにつながる危険性が高いのです。
以前にお話しした国立国際医療研究センター病院で起こったMICSによる死亡事故は、まさにこのパターンだったといえます。こうした不利益を回避し、患者さんが自分の身を守るためには、低侵襲治療は負担が少ないという短期的なメリットだけを見るのではなく、その裏にあるリスクをしっかり理解しておく必要があるのです。