小切開手術での死亡事故は経験不足の医師による不手際が重なった
今年10月、専門誌である日本心臓血管外科学会誌に心臓手術での医療事故を巡る論文が掲載されました。2020年12月、国立国際医療研究センター病院で実施された「MICS」(ミックス)と呼ばれる低侵襲の心臓手術を受けた70代の男性が手術中に心筋梗塞を起こし、およそ2カ月後に転院先の病院で亡くなられた件の一因として、術中トラブルから心筋を損傷した可能性が高いとしています。
私もこの報告を目にしましたが、やはり病院側の不手際による医療事故の可能性が高いという印象を受けました。MICSとは、従来の開胸手術のように胸骨を大きく切らず、特殊器具や内視鏡を用いての手技が中心の小切開低侵襲手術です。心臓弁膜症(大動脈弁、僧帽弁)、狭心症や心筋梗塞に対する冠動脈バイパス手術、心房中隔欠損などの先天性心疾患、不整脈、心臓腫瘍といった心臓疾患が手術適応で、亡くなった男性は僧帽弁閉鎖不全症で傷んだ弁を修復する手術を受けていました。
MICSは、小さな傷で済むため順調にいけば体の負担が少なく、短期間で退院できるというメリットがあり、近年は希望される患者さんが増えています。治療効果も従来の手術と遜色がないというデータが蓄積されてきたこともあって、私も3年ほど前から取り組み、良好な結果を残しています。