「もうひとりの自分」と「時間が止まる」 高みを目指す過程で現れた2つの感覚
このゴールを目にしたとき、私は「きっと神様が浅野選手に対して周りとは異なる“特別な時間枠”を与えたのだろう」と思いました。
これに近い「時間が止まった」と思えるような体験は、おそらく多くの人が経験しているのではないでしょうか。テストの終了時間が迫り、絶対に全問解答は無理な進捗状況だったのに、終わってみれば最後まで解答できた。その電車に乗れないと遅刻は確実で、とても間に合いそうもないのに、なぜか時間通りに乗車できた。追い詰められた状況で、そんな経験がある人は多いはずです。
私は毎日のように繰り返してきた手術の中で同じようなケースがたくさんありました。それを数多くこなしてきた結果、いまでは手術中に「この5秒間は自分の時間にしなければいけない」と思ったときは、その時間を“特別な時間枠”として使えるよう多少は制御できるようになりました。
今回お話しした2つの感覚は、常に手術のより高い完成度を目指し、ひたすら突き詰めてきたことで与えられた“ギフト”なのかもしれません。