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天野篤順天堂大学医学部心臓血管外科教授

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

「もうひとりの自分」と「時間が止まる」 高みを目指す過程で現れた2つの感覚

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「火事場のバカ力」ではないですが、ピンチが訪れた際は極限まで集中力が高まり、これまで蓄積してきた経験、知識、技術などが瞬時にフル動員され、尋常ではないスピードで対処することができるのでしょう。

 かつて日本プロ野球史上初の2000安打を達成し、「打撃の神様」と称された元巨人の川上哲治さん(故人)は、「ボールが止まって見えた」と語っています。打撃投手を相手にバッティング練習をしていたところ、突然、ボールが止まって見える感覚に襲われたといいます。私が感じる「周囲の時間が止まる」という感覚は、おそらく川上さんのそれに近いのではないかと思っています。

 昨年暮れに開催されたサッカーW杯カタール大会のドイツ戦で決勝ゴールを決めた日本代表の浅野拓磨選手(ボーフム)も同じ感覚だったのではないかと推察します。味方DFからのロングボールに反応した浅野選手は、ボールを受けてから数秒で相手のペナルティーエリア内まで侵入し、ほとんど角度のない位置からGKのニアサイド上にボールを蹴り込みました。

 だれも浅野選手の進路を阻むことができず、GKにしてもいつの間にかゴールを決められていたような感覚だったのではないでしょうか。ゴールが決まった瞬間、観客も含めて「いったい何が起こったんだ」と感じたはずです。しかし、浅野選手はゴールを決めようといつも通りにプレーしただけで、周囲の時間とのずれが生じていたために一瞬で勝負がついたのだろうと思えるのです。

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